2014年02月06日

ねずみ色の猫 「陽だまりの詩」より




テーマ 「必ず 迎えに 参ります」



ねずみ色の猫 「陽だまりの詩」より








もっくん 




ロシアンブルー オス










おじさん ねえ 


花屋のおじさん




おじさんは どうして 僕のこと




もっくんって呼ぶんだい




僕の名前は そんなんじゃないよ







それにさ 僕は いつになったら




帰れるのかな







ここは 石ころだらけで




ゴツゴツして




足の裏が痛いんだ







それと・・・いっちゃあ悪いけど




ここの食事はどうもね







おじさん 僕の家 知ってるかい




僕の部屋なんか 見たら




おじさん うへ うへえって




目を丸くしてさ ひっくり返っちゃうよ







足元は ふかふかの絨毯でさ




僕専用の寝床




なんてのもあるんだよ







ご飯は 上等な器でさ




こんな 汚れたやつに




皆で顔を突っ込んで食べるなんて




僕には 到底無理なんだよな







それに あいつら 苦手だよ




ほら あの塀の上で 伸びしながら




こっちを見ている でかいやつ




大した毛皮 着てないくせにさ




偉そうに 威張り腐って







それと あの チビ




鼻垂れの勘違いチビが




僕のこと




兄ちゃん 兄ちゃんって




もう ウンザリだよ







あっ おじさん 気を悪くしたのかい




ごめんよ 







でも聞いておくれよ




あの黒白のハチワレの奴だよ




さっき すれ違いざまに




僕の顔を まじまじと見つめてさ




哀れんだ様子で




こう言ったんだ




「お前も 捨てられたクチかい




まあ その内に慣れる




元気出せよ」







僕ね あいつの顔




ひっぱたいてやろうと思った




でもね 僕は 紳士だからね




やめたんだ










そうだ





いま 考え付いたんだけど




迷子になった 花台の所で




ご主人様を 待ってみたら どうだろう




きっと 僕のことを 心配して




探していると 思うから・・・




そうしてみるよ




じゃあね   おじさん



ねずみ色の猫 「陽だまりの詩」より



       








私の 勤務先が倒産して




この猫を 飼えなくなりました




よろしく お願いします




後ほど お金送ります




安定したら 必ず 迎えに参ります




の手紙付きで ケージごと置いていかれた







それから 三年 







うそ うそ 裏切り




誰も迎えに来ない




捨てた ということさ










だから 人間は 余り好きじゃないんだ




平気で 嘘を 付くから










自分は それでいい でも




置いていかれた者は




どうしたら良いんだ







だけど もう もっくん




もういいんだよ




気になんかするなよ










もっくん 元気出してさ




貧しくとも ここには心が




こころが あるんだよ










さあ ご飯食べて 陽だまりへ




行っておいで もっくん













三年経った 







三年待った







もっくんは 相変わらず 




もっくんの ままで







でも この頃は 人待ち顔で




花台に座る姿も見かけなくなった




美しいグレーの毛皮 




異国の空のような 碧い瞳は




個性豊かな 陽だまりの仲間の中でも




異質な存在に見えたが




何時の間にか どこにいるのか




溶け込んだという事なのか




わからなくなった







それだけ 月日が流れたという事か







長く 暑い 三度目の夏




もっくんは あまりにも急激に




痩せて やつれてしまった




突然の様子に驚き




医者に連れていくと




先生は こうおっしゃった




肝臓にガンが出来ています




あと一ヶ月持ちますか どうか










  もっくんを捨てた あなたへ







平成十五年 九月一日




忘れもしない




もっくんが 




仕事が ひと段落して




お茶を飲んでいる 父さん 母さんの




ところへ やって来た




もっくん 調子はどうだい




今日は暑いから




あまり 陽だまりには




行くんじゃないよ







もっくん おいで




いつもの ブラシやろうね







痩せて 骨ばった背中に




そっと優しく 当ててやると




もっくんは気持ちよさそうに




寝転んだ







すっかり汚れてひび割れた




足の裏が この子の




生きてきた 道のりを物語る










柔らかな 絨毯の上から




石ころだらけの土の上に




捨てられて










もっくん 苦労したな










辛い日々を乗り越えて




どこか悟った様な顔をして




目を閉じ 喉を鳴らして




からだを預けている










この三年間 陽だまりに溶け込むために




おまえは 涙ぐましい努力をしたんだね




生き抜くためには 自慢の毛皮も




汚れたって 仕方なかったけど










本当は おまえは




どう思っているのかな










ふいに もっくんは立ち上がると




まるでお礼を言うように










私たちにかわるがわる




からだを もたれかけると




静かに 店の外へ出て行った




「もっくん」 







そう呼ぶと




一度だけ 振り向いて




かすれた声で鳴いた







(父さん 母さん)




僕は 知っていたよ




わかっていたんだ




僕は 捨てられたんだね










いいんだ もう 大丈夫だよ




僕はもう だいじょうぶだよ













もっくんを捨てたあなたが




いま どこで どうしているのか




私たちには 知る由もないが




彼のことを 片時も




忘れる事はなかったと




そう願う





私達は




彼を 幸せにしてやることが




出来なかった




でも これが




精一杯だった







一体 何を期待して あなたは




彼を 私達に 託したのか







だが これだけは 言わせて欲しい




本当に その子の幸せを




願うのなら




最後まで見届けなくては




わからないだろう?







あなたは 知ろうともせずに




今も もっくんが 元気で




いると思っているのか




それとも この小さな店の前を




何食わぬ顔をして




通り過ぎたことも あるのだろうか







もっくんは あの日から




姿を 消しました










どこか人目につかない場所で




短い一生の終幕を




一人ぼっちで迎えたのかと










私たちは 毎日毎日探して




せめて 亡骸だけでもと




でも とうとう 見つからなかった







もっくん 父さんは思うんだけど




おまえは まだ 諦めていなかったのかも




しれないな




最後にもう一度




家に戻りたくて ご主人様に




逢いたくて




今もどこかを 探し歩いて




いるのかい










顔なじみの 初老の婦人が




「あら このところ ねずみ色の




猫ちゃん いないわね




ほら 花台でよく お昼寝していた」







もっくん おまえの 困り顔が




目に浮かぶよ




ご自慢の 毛皮




美しい 異国の空の瞳










父さんは 忘れないよ










いつまでも 陽だまりの仲間たちと




おまえの帰りを 待っているよ




かならず 必ず 帰っておいで










いつまでも 陽だまりの仲間たちと




おまえの帰りを 待っているよ




かならず 必ず 帰っておいで




もっくん


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私は、しこうさんの詩と出会い本当の優しさを知り

まだまだだけど成長させてもらいました。

みなさんも心に変化ありましたか?












































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Posted by regalo at 18:32│Comments(2)かとうしこうさんの詩
この記事へのコメント
あまり泣かせないでください。私もかとうしこうさんの陽だまりの詩    手に入れて人間の愚かさが猫たちにつらい生き方をさせている    すごく反省しました。家の猫達や外にいる猫達が幸せであります    ように。
Posted by 清水のn 月 at 2014年02月06日 20:36
清水のn月サマ

こんばんは。
私も何度読んでもボロボロ涙が出てきます。
人間は、言葉を持たない弱い立場の生き物に
どぉ~して優しく出来ないんでしょうか・・・
せめて、身近に居る猫達だけでも助けて行きたい
と思います。
Posted by regaloregalo at 2014年02月07日 21:56
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